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      生きる力を身につけたたくましい子供を育てる

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学校法人帯広葵学園 理事長 上野敏郎  

第87楽章 ―公(こう)第一主義に風穴あく―

 平成16年は帯広市の子ども行政にとって大きな転換期でした。その代表的なものが「帯広市保育協会の解散」です。市は、行政の責任で行う学童保育とへき地保育事業を指定管理者制度に基づいて実施することに決めました。この業務を市は43年間という長い間、地域のボランティア役員で運営委員会をつくり、実際の仕事は民間団体である「帯広市保育協会」へ委託してきました。それを、他の団体にも広げることを決めたのです。

 となりますと、帯広市保育協会は市の公募に応募する権利はありますが、必ずしも今まで通りの仕事を受託できるとは限りません。もし、仕事が取れないとなると保育業務以外の仕事をしてこなかった保育協会の存在は危うくなります。当時、保育協会の職員は63人です。

 このような背景があり、帯広市保育協会は解散を決定します。新しい仕事を自ら作り出そうとする発想がないのですから当然の結論です。しかし、この決定には行政と協会の間に一つの駆け引きがあったと思っています。いや、駆け引きというのではなく「治め方の合意」があったと私は睨んでいます。

 この協会は、すでに述べているように43年の歴史があります。その運営方法は全国にあまり例のない「帯広方式」と言われてきました。地域の運営委員会と帯広市保育協会は表裏一体の関係にあります。市は、保育協会に毎年委託費を支払います。平成16年度はその額3億4200万円でした。この委託費は、業務の運営に使うことになりますが、職員の給料はもちろんのこと退職金にも充てられることになります。となりますと、市からの仕事がなくなるということは、給料が貰えないばかりか、それまで働いてきた分の退職金も貰えないことが容易に想定できます。協会は、かつては委託費の中から退職者の手当てをしていましたが今度は大量の退職者を出すことになります。協会は、毎年の委託費から退職引当金を積んではいませんでした。

 このように考えてくると、退職金の交渉がしやすいタイミングとは、市と協会の思惑が一致する委託方法の変更時期しかないということになります。その交渉はパワーゲームの様相を醸し出します。

 協会は、市に発言力を持つ新しい会長を選んでこの幕引きに臨んだと私は推測しています。また、この判断は市と協会双方の思惑に叶うものでした。私は、当時としてはこの判断は必要な選択であったとも思っています。

 よって私は、平成16年のこの動きは行政そして市民の中にあったある意味での「聖域」的認識を変えたと思っています。硬直した組織は新しい未来を切り開いてはくれません。平成16年のこの行政判断は、帯広の幼児教育・保育の世界に風穴を開けたと私は評価します。


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